新聞社の誤報をヒューマンエラー視点で考える

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とある新聞社で誤報があったようです。
国会議員が採用していた公設秘書2人について、東京地検の強制捜査などが近日中に行われるという報道に関して、対象を取り違えたとのことです。

27日1面「公設秘書給与不正受給か」 記事は誤報 おわびします
【読売新聞】 27日1面「公設秘書給与不正受給か 維新衆院議員 東京地検捜査」との見出しの記事で、読売新聞は、日本維新の会の池下卓衆院議員が採用していた公設秘書2人について、東京地検の強制捜査などが近日中に行われると判断して報じまし

この事象をヒューマンエラー視点で考えてみたいと思います。

取材~報道までのプロセス

まず、着目すべきことは、情報を聞き込んでから、記事として公開する報道のプロセスだと思います。
(聞き込んだ)情報⇒(一記者としての)取材結果まとめ⇒(新聞社としての)報道記事
というように、とある情報が新聞社として報道する記事となるまでに、いろいろなプロセスがあり、そのプロセスのどこかで強制捜査対象の取り違いが発生したとのことですから、まず、取材~報道までのプロセスを分解してみていく必要があります。

当方は、新聞社に勤務したことがないので、以下はあくまでも想定です。
①情報の聞き込み
②情報の裏取り
③取材結果のまとめ・執筆
④記事の公開・報道
と、こんな感じでしょうか。

取材~報道プロセスにおけるヒューマンエラーリスク

取材~報道プロセスにおけるヒューマンエラーリスクを抽出してみたいと思います。

細かい状況が分からないので、多分に想定が入っていること、ヒューマンエラーリスクを抽出する視点をご理解いただく例として挙げてみたので、他にもヒューマンエラーリスクがありうることはご容赦ください。

仕事に置き換えると

この事例を取り上げてみたのは、新聞社の誤報を断じたいからではありません。

私たちが仕事をする上で、似たようなことが起こりうると考えるからです。例えば、
・営業活動で、とある情報を聞き込んできて、その情報に基づき、お客さまへの提案を作成したが、提案の骨子となる重要な事実に対する認識がずれていた。
・社内で事故が起こり、まず、現状把握をしたが、事故発生の背景に関する事実の認識が間違えていた。
・お客さまからクレームを受けて、報告書を作成、提出したが、お客さまから記載内容が事実に沿っていないと指摘された。
など、事実を誤認識することは、日常の仕事でも十分ありえると思います。

新聞社は、報道の影響の大きさから、本ブログの「事実って何?」でも触れましたように、情報の確からしさを踏まえて、事実の認定には相当慎重に、かつ、重視して実施していると思います。そのような組織でも、このような事態が発生しうるということがヒューマンエラーの本質を表しているのではないでしょうか。

しくみという観点でみると、「スイスチーズモデル」が重要なことを示唆していると思います。詳細は以下の動画をご覧頂きたいですが、要するに、
「ヒューマンエラーに起因する事故・トラブルは、何重にも仕掛けられた歯止めのしくみのほころびや隙をついて発生する」
ということです。

つまり、完璧なしくみはないと思って仕事をしないと、思わぬ所で大きな事故・トラブルに見舞われるかもしれないことを改めて認識しないといけないのではないでしょうか。以下の記事もよろしければご覧ください。

ヒューマンエラーとシステムエラー
「ヒューマンエラーはない、あるのはシステムエラーだけだ」という意見をたまに見ます。意図としては、「人の間違いを人のせいにするのはダメ、システムで防ぐ」ということだと思っていますが、この発想は、当ラボとしても大いに賛成です。もっというと、「人...

また、チームエラーという観点でも気になります。
誤報のきっかけとなったのは、取材した記者のヒューマンエラーだったのかもしれませんが、新聞社として、記事を公表する以上、組織、チームとして、ヒューマンエラーを防ぐしくみがどこまで機能したのかも今後、検証されると思います。

チームエラーを考える
ヒューマンエラーに起因する問題は、ある個人が起こすエラーから始まりますが、チーム内で、そのエラーにうまく対処できなければ、組織の信用、信頼を失うような問題になりかねません。そのチームエラーが発生するメカニズムを解説します。

その意味では、もちろん、記者個々の誤報につながるヒューマンエラーをどう防ぐかも重要ですが、記者も人間ですから、間違えることはあります。それを踏まえた上で、
・組織、チームとして、ヒューマンエラーを防ぐしくみにはどのようなものがあり、どの部分がうまく機能しなかったのか。
・とはいえ、完璧なしくみがない以上、現状のしくみのどこに、「スイスチーズモデル」でいうところのほころびや隙があるのかをどう認識し、対処していたのか。
・上記のしくみのほころびや隙を踏まえた上で、どのようなヒューマンエラーリスクが残存しているのかを組織、チームで認識し合い、どう対処しようとしていたのか。
ということも重要だと思いますし、このような視点から、自社の業務プロセスやしくみの構築、運用を考える必要があるのではないでしょうか。

最後に、あくまでも当ラボの想定に基づく見解ですが、特に、情報の裏取りや事実確認に関するしくみが、記者個人だけでなく、新聞社という組織、チームとして、どのように構築、運用されていたのかがポイントではないでしょうか。例えば、
・記者個人がとある情報を事実だと認識した過程、プロセスやそのしくみ
・更に、そのプロセスやしくみを、記者個人以外の第三者(必要であれば複数)が検証できるプロセスやそのしくみ
・情報の裏取りや事実確認の重要性がどこまで、組織、チームで浸透していたのか、また、今回のような問題にならないまでも、そのリスクを感知、認識した時の組織、チームとしての対応(自社の問題だけではなく、他社の事例からも学ぶ、教訓を得る姿勢、行為も含めて)
というあたりが気になります。
みなさまは、どのように考えられますか。

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