「こんな仕事、子供でもできる」という迷言

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ドラマなどで、仕事で失敗した部下に、上司が「こんな仕事、子供でもできる」的な発言のシーンがあったりしますよね。
この発言がパワハラなどに当たるかどうかはともかく、ヒューマンエラー視点から考えてみたいと思います。

私は、仕事上で、このような発言を言ったことも言われたことも記憶にないので、想像するしかないのですが、このような発言が出る背景には、例えば、以下のようなことがあったりするのでしょうね(人格否定を意図した発言は問題外なので、この可能性は除きます)。
・仕事内容自体は、さほど難しいものではない。
・それなりのスキルや注意力があれば問題なく対応できる内容である。
・上司は、(仕事で失敗した)部下であればできると思って、仕事を任せた。

そのため、上司としては、
・(仕事で失敗した)当該部下であれば、問題なく対応できると思っていたのに・・・
・なぜ、こんな間違いをしてしまうのだろう?
という気持ちから出てくる言葉なのでしょうね(言い方はどうかと思いますが)。

ヒューマンエラー的には
・仕事が簡単だからヒューマンエラーが起こらないわけではない。
・簡単に思える仕事でもヒューマンエラーは起こりえる。
と言えます。

私などヒューマンエラーの研究をしていながら、例えば、少額の経費精算など、難しい処理や高度な判断が伴わない単純なものでもエラーをして、たまに経理部門から指摘を受けたりします。
一方、高額な見積書などは、何回も見直したり、確認したりするので、金額をとんでもなく間違えてしまったという記憶はありません。ただし、金額以外の単純な文字の打ち間違いなどはたまにありますが。

なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。当ラボではこう考えます。
・人は、1日に、仕事や日常生活の中で、膨大な数の行為をこなす。
・1日に使える時間には限りがあるので、1つ1つの行為に、多くの時間や注意力を使うことはできない。
・そのため、それらの行為に優先順位やメリハリを付けざるを得ない。これらは、過去の経験を踏まえて決める。
・その際、「こんな簡単な仕事だから、そんなに時間を掛けなくてもよいだろう、確認はしなくてもいいだろう」というように、ヒューマンエラーリスクを甘く見て、優先順位やそれに伴う対応を「意図的に」決めてしまうことが起こりうる。
・一方、「意図的に」決めてはなくても、見込みや見通しが甘く、結果的に、優先順位やそれに伴う対応の決定が間違えてしまうこともある。
つまり、簡単そうに見える仕事は、エラーリスクを甘く見たり、見込みや見通しが甘いために、優先順位を落とすことで、例えば、
・やるべきことをやらない、作業や確認にあまり時間を掛けないなどの手抜きをする。
・それなりに作業や確認はしたが、一部、手順や確認項目を飛ばしたりするなどの横着をする。
ということが起こりえるのではないでしょうか。

この観点から見ると、「こんな仕事、子供でもできる」という指摘ではなくて、簡単そうに見える仕事に対して、手抜きや横着をしたと思われることがあれば、それを指摘することは、場合によっては必要かもしれません。

もちろん、手抜きや横着をせず、自分なりに時間を掛けて仕事をしたとしても、ヒューマンエラーは起こりえます。
そのことを踏まえて、仕事の途中や終わってからの確認は必要です。しかし、人は完璧ではないので、確認漏れなどもありえます。
結局、どこまで行っても、ヒューマンエラーリスクをゼロにするのは難しいと当ラボでは考えます。だからといって、最初からあきらめて、手抜き、横着するのもよくはありません。
エラーリスクはあるものと思って、それにどのようなスタンスで臨むかが大切ではないでしょうか。よろしければ、以下もご覧ください。

ヒューマンエラーに対するスタンスを考える|ヒューマンエラーラボ
とあるところで、ヒューマンエラー研修を行った時に、受講頂いた方からこんな質問がありました。 「講師の方(私)は、ヒューマンエラーは少ない方ですか?」 私は、少し考えてこう答えました。 「ヒューマンエラーは多いと自覚しています」 更に、こう続...

当ラボとしては、
・手抜きや横着があったとは思われず、軽微なヒューマンエラーであれば、「ここ間違えてたよ。後で直しておいて」という程度の軽い指摘で対応。
・軽微なエラーであっても、同じような間違いを繰り返し起こすようであれば、仕事のやり方を聞いて、一緒に解決方法を探る。
・普段、エラーをほとんどしない人が、珍しくエラーをした場合には、声掛けをして、何か変化(例:仕事上の不安や悩みを抱えている、仕事に集中できないことがある)がないかを観察する。
・逆に、自分が間違いをして指摘を受けた場合には、「ありがとう」などの感謝の意を伝える。それを継続することで、ヒューマンエラーを指摘しやすい雰囲気を職場で醸成する。
・ヒューマンエラーをするのはお互いさまだとして、チームでエラーを防ぐという発想で考える。
というコミュニケーション、マネジメントが必要ではないかと思ったりします。
みなさまは、どのように考えられますか?

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