パワハラとヒューマンエラー

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パワハラとは

厚生労働省のとある資料によると、以下の①~③の要素をいずれも満たすものを職場のパワーハラスメントの概念として整理しているようです。
①優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
②業務の適正な範囲を超えて行われること
③身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること
また、職場のパワハラに当たりうる行為として、以下の6つの行為類型が考えられるそうです(ただし、6つの行為類型に該当しそうな行為であっても、上記①~③の要素いずれかを欠く場合であれば、職場のパワーハラスメントには当たらない場合があることに留意する必要がある)。
1.身体的な攻撃
2.精神的な攻撃
3.人間関係からの切り離し
4.過大な要求
5.過小な要求
6.個の侵害

例えば、こんなことがありました

私は、ン十年前、まだ、パワハラという概念や言葉がない頃、今、振り返れば、あれがパワハラではないかと思われる行為がそこそこありました。例えば、こんな感じです。
a.上司の意向に沿わない行為をする(しない)と、「お前は、長男だから、ちやほや育てられて来たので、気が利かない」と度々言われる。
b.仕事終わりに飲みに行き、長時間、複数の上司から代わる代わる、同じような内容の説教をされる。
c.上司からの大雑把な説明で資料を作成したが、中々OKが出ない上、具体的な指示もなく、繰り返し修正させられる。
私は法律家ではないので、間違えているかもしれないことはご容赦頂くとして、abcとも6つの類型でいうと、「2.精神的な攻撃」に当たる可能性がありそうでしょうか。cに関しては、「4.過大な要求」に当たるかもしれませんね。
パワハラの概念からみると、abは①②③すべてに該当する可能性がありそうです。cに関しては、②に該当するかどうかがポイントになるのではないでしょうか。上司は、「教育の一環として、お前の成長のために、少しレベルの高いことを期待し、要求している」的なことを言い訳にするかもしれません。

ヒューマンエラー的に見るとどうか

当ブログは、ヒューマンエラーをテーマとしているので、その視点から見てみたいと思います。
まず、aですが、人格否定的な発言となりえるものなので問題外ですね。当然、つい、うっかり行ってしまったという言い訳は通用しないのではないでしょうか。また、当ラボで考えるエラーのタイプに、「あえて型エラー」があるのですが、その範疇も超えて、故意的な悪意ある発言だと思います。
次に、bですが、まず、上司が自己満足(例えば、部下の不甲斐なさを見て感じた自分のイライラを解消する)のために行っているなら、aと同じく、問題外の行為だと思いますが、そのような人は少数派だと思います。多くの場合、上司側からすると、よかれと思って説教していると思っているかもしれませんが、そもそも説教は何のためにやるのでしょうか。よりよい方向に向けて、説教相手の意識や行動を変えてもらうためにやるのではないですか。同じような説教を繰り返しされて、聞く側の意識や行動が変わるでしょうか。そう考えると、上司の完全な判断エラーではないかと思います。逆から考えると、自分の伝えたいことを相手に伝えたいなら、
・相手が正しく認識できる話し方、言葉で、相手の認知エラーを防ぐ。
・相手に、自分の置かれた状況やこのまま意識、行動を変えないと、どんな問題があるのかを理解させ、どう変えるべきかを正しく意思決定できるように誘導して、相手の判断エラーを防ぐ。
という工夫が必要だと思います。
最後に、cに関しても、そのやり方で問題ないと思っている判断エラーがあると思います。相手のために、よかれと思ってやっているかもしれませんが、少なくとも、例えば、「育成のねらいがあり、時間が掛かってもよいので、自分で考えながら、じっくり取り組んでほしい」という意図を明確に伝えるとか、部下が、
・そもそも、上司の指示の言っていることが認識できない認知エラー
・言っていることは分かったが、目指す方向がよく分からず、何から手を付けてよいか分からない判断エラー
を防ぐ努力はするべきです。
・目指す方向が分かり、まず、何から着手すべきかは分かった上で、
・目指す方向に至るためのトライ&エラーができる状態にし、
・繰り返しやる中で、少しづつステップアップして、目指す姿に近づいていることを部下が感じられる。
このような状態でないと、部下はパワハラではないかと感じる可能性があるのではないでしょうか。
たまに、著名な方のパワハラ疑惑が出て、「自分はそのような意図はなかった」旨の発言をして、あたかも、自分に非はなく、相手の認識が違っている、もしくは、お互いの認識が合っていないというニュアンスのコメントを目にすることがあります。もちろん、人間ですので、お互いの認識が食い違うことはあるでしょう。ただ、著名な方は、一つの発言でパワハラを問われることがあるのかもしれませんが、通常は、普段の会話や所作、コミュニケーションの積み重ねの結果が問われるものだと思います。会話の中で、自分の発言を意識し、相手の反応を見ながら、認識が食い違わないように、試行錯誤することが大切ではないでしょうか。
チームで仕事をし、部下、後輩がいる以上、パワハラのリスクはありますので、お互いに気を付けましょう。

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