「こうすればヒューマンエラーが減るやり方」は魚を与えること?
ヒューマンエラーを軸に、コンサルティングや研修、ワークショップなどを実施していると、「細かい話はいいから、こうすればヒューマンエラーが減るやり方を教えろ(実際はもっとマイルドな表現です)」というニュアンスのご意見やアンケートの回答を頂くことがあります。
少し話が外れますが、老子の格言で、「授人以魚 不如授人以漁」という言葉があるそうですね。これは、「飢えている人がいるときに、魚を与えるか、魚の釣り方を教えるか」ということだそうです。「こうすればエラーが減るやり方」を私は、「ヒューマンエラー防止の仕事術」と勝手に呼んでいるのですが、この「ヒューマンエラー防止の仕事術」は「魚を与える」ことになりうるのではないかと思っています。もちろん、「ヒューマンエラー防止の仕事術」を否定している訳ではありません。それらを提唱されている方々は、ご自身の経験などから、こうすればエラーを防止できる、更に、成果も得られたノウハウを披露されており、このノウハウがすぐ必要な人もいらっしゃると思います。
しかし、当ラボでは、それに加えて、もっと必要なことがあると思っています。それは、「ヒューマンエラー発生メカニズムを知ること」です。なぜ、そう考えているかを以下にまとめます。
なぜ「ヒューマンエラー発生メカニズムを知ること」が必要なのか?
・ヒューマンエラーは仕事でもプライベートでも、当たり前のように起こる現象である。
・プライベートで起こったのと同じタイプ・現象のエラーが仕事で起こることもある。
・仕事は当然のこと、プライベートで起こったエラーも含めて、要因・対策を検討、実践し、今後に活かす。そのサイクルを日常的に回すことが、ヒューマンエラー防止の基礎力・実践力向上につながる。
と考えています。また、
・人の持つ知識、経験、スキルや認識、考え方、行動特性などは人によって異なる可能性がある。
・仕事内容や目的、職場環境など置かれている状況も異なる。
ことを踏まえると、先述した「ヒューマンエラー防止の仕事術」が、そのまま活かせないこともあるかもしれません。
何より、当ラボが重要視しているのは、
・自分で起こしたヒューマンエラーを
・自分の特性(知識、経験、スキル、認識、考え方、行動特性など)や
・自分の置かれた状況(仕事内容・目的、職場環境など)を踏まえ、
・自分で、要因追究、対策立案、対策実践を繰り返す。
ことです。自分で考えたことを実践する、それがうまく行かなかったら振り返って、次にどうするかを検討することが自分の血肉となり、ヒューマンエラー防止の基礎力・実践力向上につながる、そのための基礎知識として、「ヒューマンエラー発生メカニズムを知ること」が必要であると考えています。もちろん、「ヒューマンエラー防止の仕事術」を知って、それを自分なりに工夫することでもよいと思います。「ヒューマンエラー防止の仕事術」は一般論的な要素が大きく、個別具体的な問題に対応できないこともあるかもしれません。更に、聞くと、なるほどと思うことも多いので、つい、手段に目が行きがちで、何のためにそうするのかが抜け落ちてしまって(目的が追究されることなく)、応用が利かないということもあるかもしれません。どちらにしても、聞いた内容を自分事化して、自分の血肉にすることが何より重要なのではないでしょうか。また、他人から聞いたことは、やってみて、うまく行かなかったら、次からはやらなくなるかもしれませんが、自分で考えたことはできるだけ成功させたい、成功するまでやってみると思うのが人情ではないでしょうか。
ヒューマンエラー防止の基礎力・実践力向上させる意義
最後に、ヒューマンエラー防止の基礎力・実践力を向上させる意義に触れておきたいと思います。
・しくみを構築するのも運用するのも、所詮、人であり、しくみのほころびをゼロにすることは難しい。
・しくみの改善は一部の人がやるべきことではない。組織の構成員全員が、自分の立場で、それぞれ、しくみのほころびを無くす、小さくすることを実践する。
(ヒューマンエラーとシステムエラーも参照ください)
これこそが、すべての組織に求められることであり、そのためには、ヒューマンエラー防止の基礎力・実践力の継続的な向上が必要であると、当ラボでは信じています。
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