私は見る専門なので、想像の範囲を超えませんが、野球をヒューマンエラーという視点でとらえてみたいと思います。何せ、見る専門なので、考え違いはご容赦くださいw 考え間違いのご指摘はコメント頂けましたら幸いです。
AIで調べてみたら、野球におけるエラーとは、「守備側の選手が打球を処理できずに打者や走者の出塁や進塁を許してしまうことです。失策とも呼ばれます」と出てきました。例えば、野手が普通にプレーすれば取れそうなボールを取り逃してしまい、打者の出塁を許すということでしょうか。
以下で、考察を加えていきたいと思います。
人の情報処理システムからみた野球のプレー
当ラボでは、人の行為を「人の情報処理システム」でとらえましょうといっていますので、その視点から考えてみたいと思います。人の情報処理システムは、人の行為を「記憶する」「認知する」「判断する」「行動する」という4つの働きで構成されているとしていますので、その視点から考察していきます。
【記憶する】
記憶する働きは、何かを覚える、覚え続ける、思い出す働きと、覚え続けた結果としての知識、経験、スキルに関連します。
そのため、例えば、「このピッチャーの配球傾向、パターンはこうだ」という知識や「ある試合のこのような場面、状況ではこんなプレーをした」という経験、ボールを投げたり、バットを振ったりするスキルを必要な時に思い出して、プレーに活かします。みなさまも同じですが、スキルがあるとは、習慣化されて、反射的、自動的に体が動く状態になっていることで、状況、対象などに応じたスキルが、脳の中から引き出され(無意識の中で)、当たり前にプレーができるようになります。
【認知する】
認知する働きは、自分の周りにある対象物から発せられる情報を見たり、聞いたりして、その意味合いを認識することです。本当は見る聞く以外の五感全体なので、匂う、触る、味わうなども含まれます。おそらく、野球では見る聞くが中心だと思いますが、もしかしたら、ピッチャーはボールを触って、何かプレーに必要な情報を認知しているのかもしれませんね。
例えば、バッターがピッチャーのボールを見る、野手がバッターの打球音を聞くなどになります。
【判断する】
判断する働きは、認知した情報に基づき、自分の置かれている状況を理解し、その状況に合った行動をどうするかを頭の中で決めることです。
例えば、バッターが、3回裏ノーアウト、ランナー1塁、2点差で負けている状況で、まだ回が浅いので、とにかく1点づつ返していくべきと考え、ライト方向にヒットを打とうと判断するということになるでしょうか。
余談になりますが、私は見る専門ですが、推しの球団があって、野球に興味・関心があるので、野村克也さんの著作を何冊か読んだことがあります。野村ID野球は、まさに、このプレイヤー一人ひとりの「判断する」働きを高めて、チームのレベルアップを図ることを目指したものだと思っています。更に余談になりますが・・・野村ID野球の考え方は昔からあったものも多く、世間で言われるほど大したものではない・・・というような論調をたまに見ますが、それが事実だとしてもなお、価値が下がることはないと思います。重要なことは、野球人として必要なモノの見方、考え方や何をすべきかを整理し、誰もが理解できるコンテンツにし、それを伝え、実践できる形にしたことにあると思っています。みなさまの会社に置き換えたら、作業手順書、マニュアルなどの標準化と同じだと思います。決められた製品を当たり前のように作れることのすばらしさをみなさまも日々、お感じではないでしょうか。
【行動する】
行動する働きは、判断した結果の通り、決められた対象に対して、決められた方法・手順で行うことです。
例えば、ピッチャーが、キャッチャーのサインを見て、この球種、このコースに投げようと判断した結果に基づき、球を投げることでしょうか。
野球におけるヒューマンエラー
では、野球におけるヒューマンエラーを考えるとどうなるのでしょうか。ただし、ここでは、野球でいう「エラー」とは分けて考えたいと思います。といいますのも、冒頭で触れましたように、野球におけるエラーは守備側で発生する事象に関する記録ですが、ヒューマンエラー=人の間違いと考えたときに、攻撃側でも発生しうるからです。
【記憶エラー例】
・対戦ピッチャーの持ち球、配球傾向、パターンなどの情報を間違えて記憶する。
・ブロックサインの意味を間違えて記憶する、サインの意味を思い出せない。
これらの記憶エラーに対応するために、打席に入る前にスコアラーからの情報をベンチで確認したり、サインの意味がよく分からなかったら、もう一度サインを出してもらったり、タイムを取って確認したりしてるのでしょうか。
【認知エラー例】
・(バックネットなどに)表示されているカウントボードを見間違える。
・外野フライを取ろうとして、球の行方を見失う(照明が目に入るなど)。
認知エラーは他にもいろいろありますね。見方によっては、バッテリーはバッターの認知エラーを誘おうとしているのかもしれませんね。例えば、「球の出所が見にくいフォームにする」「複数の球種を途中まで同じ軌道に通す(ピッチトンネル)ことで、球の変化を見極めにくくする」など。
私は野球をしたことがほとんどないので分かりませんが、プロレベルになると、守備側は打球音を聞いて、打球方向を判断することもあると聞いたことがあるのですが、その聞き間違いという認知エラーもあるかもしれませんね。
【判断エラー例】
・内野ゴロを取って、セカンドに間に合うと思って投げたが間に合わななった。
・バッターがヒットを打ち、セカンドまで行けると思い、進塁したが、間に合わずアウトになった。
判断エラーも他にいろいろありえますし、「ファインプレーとエラーは紙一重」と言われることもあるくらいですから、ある意味、判断のいかんがそれを左右するといえるのかもしれません。また、このギリギリの中での瞬間的な判断が野球の醍醐味を生み出しているというのは言い過ぎでしょうか。
【行動エラー例】
・一塁ランナーを進塁させようとして、バントしたが、ポップフライでアウトになった。
・ピッチャーが投げる際に、リリースポイントが悪くて、投げようと思ったコースと違う所に投げてしまった。
ある意味、野球観戦すると一番目につくヒューマンエラーと言えるかもしれません。というのも、
①認知、判断内容は他の人からは伺い知れないことが多い。
②行動は認知、判断した結果の行為であり、一つの行為の区切りとなることが多い。
ということが言えるからです。
①に関して、例えば、バッターが追い込まれて、バットを短く持ったのを、キャッチャーが見て、バッターが「コンパクトに振ろう」という判断をしたと感じることは出来ますが、それはあくまでも打者心理を推察しているに過ぎません。もちろん、その推察を踏まえて、備えることは大切だと思います。
②に関して、みなさまも自分の行為を思い起こして頂きたいのですが、人の行為の最後は行動で終わることが多いということです。例えば、バッティングは、
●ピッチャーの投げた球、(凡その)球筋を見る【認知】
↓
●球種、コース(予測含め)などを踏まえ、バットを振るかどうか判断する【判断】
↓
●判断結果に基づき、バットを振る(振らない)【行動】
で、1サイクルが完結します。バットを振らなかった場合、行動はしていないのですが、「バットを振らないという判断をした結果、『バットを振らない』という行動をした」と言えるかもしれません。
また、頭では「バットを振らない」と判断したのに、つい、体が反応してバットが出てしまったという事象も行動エラーと言えると思います。野球に限らず、スポーツは瞬時に「認知→判断→行動」のサイクルを行うことが要求されますが、行動はどうしても一定の時間が必要となり、「認知→判断」の時間をギリギリまで短くせざるを得ないのではないでしょうか。そのため、体が反射的に反応できるようにトレーニングをする結果、「つい、バットが出た」という事象が起こりやすいのだと思います。
最後に
野球で、仮に凡打をしたとしましょう。パッと見ただけだと、先述したように、行動エラーのように思えるかもしれませんが、別のエラーの可能性もありえます。
例えば、以下のように考えられます。
●ピッチャーのリリースポイント、タイミング、(凡その)球筋を見切れなかったのか:認知
●球種、コースなどを絞り込み、どうバットを振るか(引っ張り、センター返し、流し)の判断が良くなかったのか:判断
●判断は良かったが、バットスイング(出し方、スピード、角度など)が良くなかったのか:行動
また、
・認知の問題を解決するためには、経験からくる慣れや洞察、動体視力の向上
・行動の問題を解決するためには、自分の目指す打球を生み出せる自分なりのスイングの確立
など、それなりの時間が掛かると思われます。もちろん、天賦の才があって、それらを短期間で習得できる人もいると思いますが、自分の努力で、着実に、ある程度早く改善できるのは判断のような気がします。その意味でも、先述した野村ID野球の価値があるように思います。
話を企業に移すと、こんな考え方もできるのではないでしょうか。通常の作業・業務は、野球で求められるほどのスキルは要求されないことが多いと思いますので、
・認知、行動のポイント(必要であれば判断も)を明らかにしつつ、
・作業教育・訓練を通じて、知識を習得し、経験を積み重ね、スキルを向上させる、
・判断基準を明確にして、組織全体での浸透を図り、組織全体が同じ方向を向いて、仕事できるようにする。
つまり、平たく言えば標準化を図ることが必要ですし、みなさまの会社でもそのような取り組みをされていることと思います。
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