今、あるテレビ局の幹部の発言がニュースになっていますね。
これまでも、有名人の過去のパワハラ、セクハラ発言がニュースに取り上げられ、本人が釈明を求められることも多々ありました。それらも踏まえて、ヒューマンエラー的に考えてみたいと思います。
発言内容を覚えてないのは何エラー?
みなさまは、友人や知り合いから、「そういえば、昔、こんなことを言ってたよね」と言われたにも関わらず、ご自身が、その発言の記憶がないということはありませんか。
ちなみに、私はよくあります。しかも、飲み会の場での発言は、アルコールの影響なのか、会話をあまり覚えていないことも多いですw
冗談とアルコールの影響はさておき・・・何気ない日常会話の内容を忘れる程度であれば、ヒューマンエラーとは言えないと思いますが、あえて、どのタイプのヒューマンエラーかというと、過去の記憶がない現象なので、記憶エラーです。人間の脳は、そもそも、特に何もしなければ、記憶が薄れたり、変化したり、あいまいになったりする構造になっているそうです。
興味のある方は「忘却曲線」とネットで調べてみてください。これ自体は、学習によって得た記憶が時間の経過とともにどのような変化するかを表したものですが、一般論的にも、時間の経過とともに記憶が薄れ、変化していくことを示しているととらえてよいのではないでしょうか。
みなさまも日常的に経験されていませんか。
具体的事例で見てみると
一般論では、当ラボの伝えたいことがみなさまにうまく伝わらないかもしれませんので、ここで、事例に触れながら考察してみたいと思います。

詳細は上記サイトをご覧頂きたいのですが、要するに、以下のような事実が報じられています。
・フジテレビ元専務の大多亮氏が、「女性アナウンサーは、上質なキャバ嬢だ。ホステスで売れるアナウンサーがいいアナウンサーだ」とよく発言していた。
・その発言をある女性アナウンサーが忘れられない言葉だと証言している。
・当の本人は、「言葉の選び方が悪いということですね」「言葉の選び方が悪いということです。そんな風に本当に思ってないですし。(言った記憶は)ないですけども、記憶されている方の方が記憶されていると思うので。それは、否定はまったくしないです」と発言した。
「上質なキャバ嬢」「ホステス」の例えの是非の判断は、それぞれの価値観にもよることだと思いますので、ここでは問いません。
あくまでも、上記事実が正しいとして、ヒューマンエラー的に見ると、
1.本人の言うように、「言った記憶がない」ということであれば、記憶エラー
2.そもそも、発言の時点で、「言葉の選び方が悪い」といえるのであれば、判断エラー
ということになるでしょうか。
2に関して、「そんな風に本当に思ってないですし」という発言の意図がよく分かりませんが、仮に、ちょっと受け狙いで、つい言ってしまったということであれば、「問題発言をヒューマンエラー的に考える。」が少し参考になるかもしれません。
興味深いのは、1の記憶エラーです。
「上質なキャバ嬢」発言を聞いた女性アナウンサーはおそらく、大なり小なり衝撃を受けたから、記憶に残っていたのでしょうし、覚えていたから、このような発言につながっているものと思われます。
心理学でも、記憶と感情は深く結びついており、感情が記憶の形成と定着に大きな影響を与えうると考えられています。
※以下、参考までに、AIの見解を載せましたが、絶対に正しい保証はないことを踏まえ、ご覧ください。


一方の本人は「言った記憶がない」とのこと。
「女性アナウンサー=上質なキャバ嬢」論が当の本人にとっては、ごく普通のことなので、特に、気に留めることもないし、感情が揺さぶられることもなく、記憶にも残りにくかったのでしょうか。
これ以上は、推察の域を出ないので、このくらいで留めます。
また、「言葉の選び方が悪い」と言っていることからすると、「上質なキャバ嬢」にしようか、それとも「〇〇〇」か、いや「×××」かな・・・など、どのような表現、言葉を使おうか、その場で、いろいろ思案した可能性があります。
その場合、いろいろ思案したことは覚えているが、どう言ったかは覚えていない・・・ということでしょうか?。これも推察の域を出ません。
更に、違う視点で、少し気になることがあります。
「上質なキャバ嬢」発言が、これだけマスコミで取り上げられるということは、問題発言の可能性があるということでしょうか。
仮に、その前提で考えると、少なくとも、フジテレビには、この発言が問題発言である、もしくは、問題発言となる可能性があるという認識がない、薄かったということも想定されます。
もし、オフィシャルな会合で、他の経営幹部など当の本人にモノ言える人がいる場で、このような発言があったとしたら、その場で、それに対する指摘は出なかったのでしょうか。そうだとすると、組織としての判断も気になります(よろしければ、「組織内での課題に対する判断をヒューマンエラー的に見る」もどうぞ)。
仕事・ビジネス上、何を教訓とするのか
たまに、有名人が過去の発言を問題視されて、「そんなこと言っていない」と反論することを見かけます。発言内容にもよりますが、個人的には、なぜ、そんなことを言い切れるのかなと思うこともあります。
日本は、「記憶にございません」的な発言への風当たりが強いように感じます。おそらく、昔の有名な疑獄事件の影響が強いのかもしれませんね(これに言及すると、私が若者ではないことがバレそうですがw)。もちろん、この事件の当事者は覚えているにも関わらず、ごまかしていると世間がそう思っていたから大問題になったと記憶しています(この頃は、私は子供でした)。この影響もあって、問題発言を指摘されたら、「記憶にございません」とは言いづらいのでしょうかね。
しかしながら、人間であれば、過去の発言を覚えていないことも当然あります。むしろ、その方が多いかもしれません。よほど、感情が動かないと、記憶に残りにくいのではないでしょうか。
みなさまも仕事やビジネス上でした過去の発言が問題とされることがあるかもしれません。その発言の記憶がないこともあるでしょう。
その時に、まず、するべきことは、自分に心当たりがあれば「素直に認め、受け入れる」ことではないでしょうか。先ほどの事例のお方は、文面上、素直かどうか判断は付かないですが、受け入れてはいるように感じます。
何よりも、普段から発言内容に気を付けることですよね。仕事やビジネスでの発言やコミュニケーションをするのは、(情報)発信側の言いたいことを(情報)受信側に伝えることのはずです。そのために、どのような表現をするのか、どのような言葉を使うのか、とても重要なはずです。その意味では、普段からのコミュニケーションのあり方が問われるのかもしれませんね。
コメント