組織のトップ・リーダーの失敗はなぜ繰り返されるのか? ~ ヒューマンエラー視点で読み解く3つの○○観と「ダメトップ・リーダー」の5類型

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当ラボの本サイトの冒頭に「世の中はヒューマンエラーにあふれている」と掲げていますように、人が生きていく上で、ヒューマンエラーは避けては通れない問題だと考えています。

組織のトップ・リーダーの立場で考えても、それは同じです。
組織のメンバーのヒューマンエラーリスクを想定し、それに備えることはもちろんのこと、自分自身のエラーに関しても配慮する必要があります。

このようなヒューマンエラー視点からみると以下の3つの○○観が重要ではないでしょうか。
1.ヒューマンエラー観
2.責任観
3.組織継承観

これらの解説から話を進めていきたいと思います。

3つの○○観

ヒューマンエラー観

「人はエラーを起こす」という大前提の元に、エラーへの理解を深め、それを踏まえたエラー防止を実践しようとする信念のことです。

私も仕事柄、いろいろな方とヒューマンエラー防止に関して、意見交換することがあります。その際、私が、「人はヒューマンエラーリスクから逃れられない」「人である限り、エラーは起こしうる」という話をすると、みなさん、総論賛成していただけます。
ところが、話を進めていくうちに、「なぜこんなエラーを起こすのか」「まさか、こんなエラーをするとは」という発言が出てくることがあります。

この発言自体を否定している訳ではありません。
この発言の背景にあるものが、
・エラー要因や背景は何なのか、現状の自職場や環境、しくみなどにおける問題・課題は何か。
・これまでに、このエラーリスクは顕在化していなかったのか、事前にそのリスクを認識、抽出する方法はなかったのか。
など、「ヒューマンエラーをゼロにはできない」という視点で、今後、どうしたらよいかを前向きに検討するための発言であればよいのですが、ともすれば、エラーを起こした個人の問題だけに収斂させようとする意図があったり、これらの発言が、エラーがなぜ起こったのか、自職場や環境、しくみなど組織にも問題はなかったのかを検討するバイアスになりかねないことを危惧しています。

更にいうと、エラーを起こしうるのは、組織のトップ・リーダーも同じです。
むしろ、組織のトップ・リーダーのエラーの方がやっかいかもしれません。
・事業環境や景気の動向、顧客のニーズ、技術発展などの読み、見通しに関する間違いによる事業運営を失敗する。
・組織が抱える不具合やその対処の必要性を認識していながら、投資対効果の判断を間違え、そのまま放置し、社会的な問題を引き起こす。
・自分の周囲を、耳障りの良いことばかりを言うイエスマンや自分のお気に入りで固めて、反対意見や耳の痛い進言をする人材を遠ざけることによって、組織内に、忖度が蔓延し、現場の実態や隠されたリスクがトップに届かなくなることで、組織全体の自浄作用が失われる。
など、組織のトップ・リーダーのエラーにも関わらず、外的要因や組織、別の人のせいにして、自らの責任を免れることが可能な場合が多いからです。

つまり、ヒューマンエラー観には、組織のトップ・リーダーとして、自分のヒューマンエラーもゼロにできないという覚悟を持って、組織運営することがとても重要だと思います。

参考までに、当ラボが考える、ヒューマンエラーに対するスタンスをご紹介しておりますので、興味のある方はご覧ください。

ヒューマンエラーに対するスタンスを考える
ヒューマンエラーが少ないに越したことはありません。ただ、単に、エラーが多いから悪いということではなくて、エラーに対して、どう向き合っているかというスタンスが大切なのではないでしょうか。

責任観

次は、責任観です。責任感ではありません。

組織のトップ・リーダーとして、「人はエラーを起こす」という大前提の元、組織のメンバーはもちろんのこと、トップ・リーダー自らもエラーを起こしうることを踏まえ、組織で何か問題があった時の責任をどう考えるかということになります。

まず、組織のトップ・リーダーとして、その責任にどう向き合うかを常々考えることが重要です。
問題が発生してから考えるようでは、対応が後手に回ります。
・組織内に、どのようなヒューマンエラーリスクがあり、それが最悪の事態に至った場合、どのようなことが起こりうるか。
・上記事態が起こった場合、トップ・リーダーとして、どのような責任を果たさないといけないか、そのために、どう対処すればよいか。
を繰り返し検討し、出来る備えは普段からしておくということでしょうか。

その備えの一環として、責任を果たすための応急対応や問題を振り返って、再発防止、更に、対策を水平展開できるしくみを平時に構築しておき、いざという時に運用できるようにしておくことも求められます。

最後に、責任を果たすという意味では、情報発信も重要です。
問題の所在を隠蔽せず、組織内外に事実を情報発信することで、信頼の回復を目指す必要があります。
次の○○観にもつながるのですが、問題の所在を隠蔽する場合の多くは、現組織体制におけるトップ・リーダーの責任をあいまいにしたり、自分の権力を温存しようとする意図にあるものと思われます。
このような発想で事に当たっても信頼回復につながるとは到底思えません。

組織継承観

最後は、問題を引き起こした組織をどう立て直し、次のステージへと高めていくか、必要であれば、次世代に継承していくという覚悟を持って臨めるかということではないでしょうか。

責任の取り方の1つとして、組織のトップ・リーダーが辞めるということも、当然、選択肢に入ってきますし、それを排除してはいけません。
もっというと、関係者からの信頼を回復し、理解を得た上で、組織およびそのメンバーを守ることが第一優先のはずであり、そのために必要であれば、自ら身を引くことを躊躇してはいけないのではないでしょうか。

このようなことを言うと、次にバトンタッチできる人材がいないから、「自分が残って責任を果たす」と言い出す人もいるかもしれません。
当ラボからすると、それ自体が、自ら組織のトップ・リーダーの資格がないと言っているように聞こえます。
前項の責任観を突き詰めていったら、何か問題が発生した時に、自らが責任を取って辞めることも視野に当然入れるべきですし、常日頃、次の世代に組織を継承することを意識して、人材を育成しておくべきではないでしょうか。
「自分が残って責任を果たす」と言うことは、組織のトップ・リーダーとして、自ら、人材の目利きと育成の能力がないと宣言しているようなものです。

だからといって、相談役になるなど、形だけ禅譲したように見せかけて、権力の温存を図るなど、もってのほかです。
ちなみに、デジタル大辞泉によると、禅譲には「中国における易姓革命観に基づく君主交代の一形式。天子がその位を世襲としないで、有徳の人にゆずること」という意味があるそうです。
さらに、易姓革命観とは「中国古代の政治思想。天子は天命を受けて国家を統治しているから、天子の徳が衰えれば天命も革あらたまり、有徳者(他姓の人)が新たに王朝を創始するとするもの」だそうです。
今時の組織運営において、世襲はないとしても、「自らの徳が衰えたことを悟って、次の有徳の人にゆずる」という精神は大切ではないでしょうか。

3つの○○観からみた「ダメ」トップ・リーダーの5類型

前章の3つの○○観を踏まえると、組織のトップ・リーダーとして、「ダメ」なタイプとして、以下の5つが挙げられるのではないかと思います。

組織運営やリーダーシップ論からみると、他にもいろいろな類型があるのかもしれませんが、ヒューマンエラー視点でみると、この5つの類型だと当ラボでは考えております。

みなさまはどうお考えになりますか?

最後に

ここまで本記事を読んでいただいた方の中には、「そこまでいうなら、お前はどうなのか?」という疑問を持たれた方もいらっしゃると思います。

私が、世間を騒がせたり、社会的問題を引き起こして、その対応を誤るなど、組織のトップ・リーダーとして失敗してしまった人と比較して、確実に、マシだと言えることが一つあります。
私は、少なくとも、自分の器を分かっていて、組織のトップ・リーダーになろうとは思いませんし、そもそも、その能力はないので、なれないという自覚があります。

ちょっと話は外れますが・・・この間、あるサブスクで懐かしのドラマを見ていたら、「仁 -JIN-」でこんなセリフがありました。

「正直で、己を大きく見せることはしない。けれど、自分のなすべきことに対しては、あらん限りの努力をする。あなたの器はきっとそう大きくはない。けれど、とても美しいんでしょうなぁ。それが故に周りの人間は、助けたい、守りたいと思う。それが南方仁という器なのでしょう」

これは、ペニシリン製造の協力を求めて頭を下げた際、醤油屋の濱口儀兵衛が主人公・南方仁に向けて語った言葉です。

「仁 -JIN-」はこれまでも何回かみていて、このセリフも聞いているはずなのに、完全に聞き逃しているエラーは本当に情けない限りですが・・・これが、まさに、組織のトップ・リーダーのあるべき姿の1つを示していると思います。

人の器とは、
・自分で決めるものではない、周りの人が感じ、認識するものである。
・器を大きくすることは難しいかもしれないが、美しく磨き上げることはできる。
ということでしょうかね。

みなさまも組織での立場上、リーダーという役割を担わないといけないこともあると思います。
・自分だって、ヒューマンエラーを起こす可能性はある。
・自分や組織のメンバーが起こしうるエラーリスクを想定し、自分が果たすべき責任を常日頃から考え、できる備えはしておく。
・この組織を今後、どうしていくべきか、そのために何をするべきか、次に、この組織を担うべき人は誰か、その人が必要な知識、経験、スキルを身に付けられるような場を提供するなど、次世代の育成を行う。

これらは、器がそう大きくなくても、できることだと思いますし、このような努力をすることが自分の器を美しく磨き上げることになるのではないでしょうか。

自分の器が大きくないからといって、他の人も自分と一緒だと思うなよとお叱りを受けそうですがw、「仁 -JIN-」のセリフにもあるように、「正直で、己を大きく見せることはしない。けれど、自分のなすべきことに対しては、あらん限りの努力をする」ことが、組織のトップ・リーダーにとって、一番大切なことだと、私は信じています。

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